研究紹介・最新の研究トピックス
Sustainable Processing / サステナブルプロセッシング
現在、様々な分野でSGDs(持続可能な達成目標)の達成が求められています。材料分野においても同様です。
材料分野におけるSDGsは、エネルギー分野や環境分野における材料の高性能化による利用だけではなく、材料製造時の環境負荷の低減も重要です。
材料製造利用におけるLCA(ライフサイクルアセスメント)やLCC(ライフサイクルコスト)を考えた場合に、材料製造と材料利用の両方において、サステナブルであることが社会実装において重要です。
高性能なナノ材料にフォーカスし、その合成・製造における、様々な問題点を解決した、ナノ材料の低コスト・高環境性・高スループット合成を構築し、社会実装するための持続可能な革新的なナノ材料プロセッシングの概念、「サステナブルプロセッシング」を提案し、
その概念を実現する手段に関する研究を行っています。
また「サステナブルプロセッシング」を実現するためには、単分野だけではなく、異分野・他分野の横断融合による新しい学問領域の開拓と構築が必須です。
「Far Analogy」による異多分野の横断融合による「サステナブルプロセッシング」の学理の構築を目指して研究を推進しています。
サステナブルプロセッシングに関するオープンアクセス可能な解説
「SDGs時代における低コストと高環境性を両立したナノ材料プロセッシング」
「材料におけるプロセッシングデザインと異分野融合の重要性」
最近の論文紹介
下記の論文は上記論文リンクからオープンアクセスが可能です
- シリカナノ粒子のサステナブルな新しい合成法 <高純度で環境にやさしい新しいシリカナノ粒子の合成手法>
- Facile room temperature synthesis of size-controlled spherical silica from silicon metal via simple sonochemical process
- 新しいグラフェンの合成法 <環境にやさしい新しいグラファイト剥離の方法>
- Green fabrication of unoxidized graphene by combination of frozen dispersion and multimode microwave thermal shock
- 室温での酸化ガリウムナノ粒子の新しい合成法
<副生成物が発生しない環境に配慮した超音波による酸化物セラミックス合成法> - Sonochemical synthesis of supersaturated Ga–Al liquid-alloy fine particles and Al3+-doped γ-Ga2O3 nanoparticles by direct oxidation at near room temperature
- Effect of redox potential of added metals and ultrasound irradiation on the oxidation behavior of gallium-based liquefied alloys
- Synthesis of porous γ-gallium oxide films using refrigerator aging oxidation from gallium nanoparticles
- 室温での新しい合金合成法 <副生成物が発生しない環境に配慮した超音波による室温合金合成法>
- Sonochemical decomposition of noble metal oxides and sonochemical alloying of gold–silver systems
- 簡便な金属分散高誘電率ナノコンポジットの新しい合成法
<副生成物が発生しない環境に配慮した超音波による金属ナノ粒子分散ナノコンポジット粉末合成> - Synthesis of BaTiO3/Ag nanocomposites using a sonochemical process and low-temperature sintering
従来のシリカナノ粒子合成法では、原料に高価でカウンターアニオンが発生する物質を使用していました。本論文では、これまでの手法とは全く異なるシリコン粒子を用いて高純度でシリカナノ粒子の合成が可能な安価で環境に優しい手法を提案しました。
従来のグラファイト剥離によるグラフェンの合成は、強力な酸化剤を用いた酸化グラフェンを経由したり、高温高圧な環境を必要としていました。本論文では、これまでの手法とは全く異なるマルチモードマイクロ波の局所選択加熱を用いて誰にでも簡単に電子レンジでグラフェンの合成が可能な環境に優しい手法を提案しました。
従来の酸化物セラミックス合成は、酸化ガリウムに限らず数百度の高温加熱を必要とします。本論文では室温で酸化ガリウムを作成する手法を提案しました。室温で酸化ガリウムに様々な元素をドープしたり、簡便に高比表面積なナノ粒子を合成することが可能です。
通常合金は、金属の融点以上に加熱して溶解させて合成します。金銀合金は、通常1000℃以上の加熱が必要です。液相の低温イオン還元では、還元電位の関係で、合金を合成することはほぼ不可能です。本論文では、ソノケミカル反応による酸化物の還元で、室温で金銀合金を作製する手法(sonochemical alloying)を提案しました。
通常、セラミックスへの金属の担持は、含浸法を使用します。含浸法は、高温加熱が必要な場合や合成後に廃棄物が発生し洗浄が必要な場合があり、環境的にもコスト的にも問題があります。本論文では酸化銀のソノケミカル反応によって、室温で廃棄物を発生させることなく簡便にチタン酸バリウム粒子表面に銀ナノ粒子を高分散担持するプロセスを提案し、その粉末を焼結したチタン酸バリウム/銀ナノコンポジジットは、単相の300℃以下の低温焼結が可能で単相の3倍の高誘電率を示すことを報告しました。