研究紹介 ナノワイヤー

現在、ディスプレイ基板が柔軟性をもち、薄くて割れなく、紙のように曲げることが可能なフレキシブルディスプレイに対応する透明導電膜の実用化研究が行われています。従来、透明導電膜で用いられている酸化インジウムズズ(ITO)は脆弱で曲げることが不可能であることから、導電性と光透過性及び曲げ耐性を有した銀ナノワイヤー透明導電膜が実用化段階にあります。しかしながら、現状の銀ナノワイヤー透明導電膜の製造には、銀ナノワイヤーの合成と、銀ナノワイヤー膜の合成の2ステップのプロセスが必要であり煩雑です。1段階目の銀ナノワイヤーの製造の大きな問題として原料における毒性物質の使用、ナノワイヤー合成のための大量の有機保護剤の使用、合成における大量の毒性廃棄物の発生が挙げられます。従来のナノワイヤー合成は原料由来の毒性廃棄物や大量の有機保護剤、洗浄処理やその廃棄物処理が、ナノワイヤー合成における高スループット化の阻害と高コスト化の原因となっています。また、その合成した銀ナノワイヤーを基盤に配列させ膜を形成させる2段階のプロセスも高コスト化の原因であり、これらの解決が求められています。

これらの銀ナノワイヤー透明導電膜製造における問題を解決するために、毒性物質および有機保護剤を使用しない、銀ナノワイヤーの合成と製膜を1ステップで可能な銀ナノワイヤー透明導電膜合成製法を開発しています。この手法では、針状の有機前駆体を合成した後、スプレーガンで基板に塗布し、還元し合成を行うことにより、プロセスの簡便化とコストの低減を可能にします。有機前駆体の合成では毒性物質を使用しない、廃棄物が発生しない高濃度合成プロセスを構築することにより、低価格化が可能になります。

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