東北大学 東北大学 大学院工学研究科・工学部 化学・バイオ系

九葉会 九葉会 KUYOKAI

会長挨拶

平成20年6月
山田宗慶(昭和45年応用化学卒、会田研、天野研)

九葉会会員の皆様には益々ご健勝でご活躍のことと拝察いたします。このたび九葉会会長に就任した山田宗慶でございます。現在大学院応用化学専攻環境資源化学講座エネルギー資源化学分野を担当しております。伝統ある九葉会の会長に現役教授としては初めて任ぜられ身の引き締まる思いです。奥脇前会長のお考えを踏襲しながら微力を尽くす覚悟でございますので、会員の皆様、また各支部役員の皆様のご指導ご鞭撻をお願い申し上げる次第です。

ご承知のように本学は昨年創立100周年という大きな節目を迎えました。九葉会会員の皆様には百周年記念事業へ多大なご寄付を頂きましたことをここに厚くお礼申し上げます。100周年を記念して多くの行事が盛大に行われ、大先輩から貴重なお話を伺う機会にも恵まれたおかげで、本学がこの百年間、研究に教育に如何に素晴らしい大学として発展してきたか、あらためて知ることが出来大いに感激いたしました。ちなみに百周年記念式典で特別表彰(芸術部門)された同期の小田和正氏(建築学科S45年卒)は今や日本の代表的なソンガーで、研究第一主義を掲げる本学のスケールの大きさを象徴していると思います。

さて、わが国は10数年前に科学技術立国を宣言し、科学技術基本計画が1次、2次、3次と策定され、大学への期待は益々大きくなる一方です。ただその期待をよく分析しますと、日本の大学教育、大学院教育がこれまでもなかなか立派だったから一層立派にしようという雰囲気ではありません。むしろ、大学教育、大学院教育ともどうも国際レベルに及ばないので、これからはもっとしっかり教育しなさい、の大合唱です。このような叱咤激励のなかで、私はこの20年間の日本の教育を取り巻く状況の大きな変化を感じます。つまり今から約20年前、某超一流企業の社長が座談会の席で某超一流大学総長に「若者の教育は私達企業に任せなさい。大学では学生に運動でもさせて体を鍛えてくれればそれでよい」と言って大いに物議をかもしました。「大学教育も随分なめられたものだ」と当時助教授だった私でもショックを受けたぐらいです。このように20年前は「企業に任せろ」だったのが、今は「大学はもっとしっかりやれ」ですから随分変わったものです。叱咤激励は期待の裏返し、と解釈しなおして、あらためて大学教育、大学院教育を見直す時期と思います。

幸い、わが化学バイオ系は教育にも研究にも大いに健闘しております。文科省が7年前に鳴り物入りで始めた21世紀COE(当初はトップ30と言っていた)に本化学バイオ系が採択されたことは既にご紹介しましたが、その後続版つまりポスト21世紀COEとも言うべきグローバルCOEにも昨年めでたく採択されております。これらは一見研究のためのプログラムに見えますが、実は大学院、特に博士課程の教育の充実が真の狙いです。勿論その前提として世界のトップレベルの研究をしていることがあり、その優れた研究環境で博士課程を鍛え上げる、というものです。これはまさに東北大学が掲げる研究第一主義そのものです。それで平成12年の21世紀COEの採択以来当化学バイオ系の博士課程の学生には(充分とは言えないまでも)かなりの額の奨学金が与えられ(返済不要)、研究に専念できる環境が整いつつあります。このような環境で今後は同窓生の意見を大学院教育に反映させられないかということが重要な課題になりそうです。

奥脇前会長も会員との接点を増やすために現状のホームページ、会報、名簿、リクルート訪問、各種総会などをきめ細かく充実させるべきであると仰っておられますので、私もその考えを踏襲する考えです。その過程で、卒業後いろいろな方面で頑張っておられる同窓生の皆さんから古巣の大学の大学院教育へのアドバイスをいただいて一層充実させたいと考えています。これは単に産業界の実際を学生に知ってもらうという考えではなく、むしろ科学技術立国日本の将来を担う若者をきちんと教育するために大学のみならず既に卒業した同窓生の力も借りよう、ということです。これと言って資源を持たないわが国が唯一の資源とも言える人間をいかに教育していくか、会員の皆様から大いにお知恵とご支援を賜りたいと思います。

末筆ながら九葉会会員の皆様の益々のご活躍とご健康とをお祈りいたします。