研究内容(全体的な解説)

Research activities (general)

当研究室(バイオ工学専攻 応用生命化学講座)では一貫して「酵素,代謝,その応用」を最も重要なキーワードとして研究を続けています.酵素とは,すべての生命の活動を根源的レベルで推進している生体触媒です.生命における酵素の重要性は,たった一つの酵素の機能の欠損が生物を死に至らしめうるという一事をもってしても思い半ばに過ぎるでありましょう.さらに酵素は,細胞における本来の生理的機能から離れて,それ自体が比類の無い触媒として種々の反応に利用することができます.ただし,応用目的や条件に応じて特殊な特性・機能が酵素に要求される場合がほとんどであります.当研究室の研究テーマのひとつは,特色ある有用酵素の原石を自然界に広く求め,これを見いだして改良することであります.そしてそのような実りある探索研究のよりどころは,「生物の多様性」であります.

微生物から高等動植物に至るまで,生物は実に多様であり,それらの織りなす生命現象もまた然りであります.例えば,0℃で活発に増殖する微生物もいれば80〜100℃といった高温環境下でのみ生育できる微生物も存在します.強酸性条件を好む生物もいればアルカリ性を好む生物も多数存在します.さらに植物に目を転じますと,その二次代謝産物は,生物が作り出す化合物群としてはもっとも化学的多様性に富んだもののひとつであります.その生物学的役割,動物やヒトに対する生理活性なども極めてバラエティーに富んでおり,医・薬・農・工学分野において,その利用や活性制御に多大な関心が払われています.二次代謝はいわば化学的多様性の宝庫であり,ユニークな生化学反応の宝庫でもあります.重要なことは,こうした多様性を生み出す営みに酵素の触媒機能がどのように活用されるかといった戦略は,われわれが想像する以上に巧みであり,この点について生物から学んできたことはまだほんの一部しかないということであります.二次代謝産物の生合成を司る酵素やその活性制御のメカニズムにしても,その研究には多くの困難を伴い,ほとんど明らかにされていないのが現状です.当研究室では,そうした未開拓の多様性を基盤として,モデル生物を用いた研究も活発に行ないながら,生物における酵素機能の利用の巧みな戦略や仕組みを解き明かし,特色ある有用酵素の探索とその分子機構,代謝や遺伝子発現の制御機構の解明に携わっています.そのような研究の応用分野は,工学領域のみならず,医学,薬学,農学,食品科学,環境科学など多方面に渡っています.

研究のおもな柱

新規な生化学反応の探索と応用
酵素の構造解析と分子デザイン
高等植物における代謝調節と細胞内情報伝達の機構解明
環境微生物学および応用酵素学


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