タイヤやプリンターのトナーなどの原料になる機能性材料として生産されるカーボンブラック(CB)は重油を熱分解することにより得られますが、その生成機構は非常に複雑です。まず、熱分解反応により多環芳香族炭化水素(PAH)が生じ、CBの粒子核が発生します。これに物理的な凝集や化学反応による表面成長により一次粒子が形成され、さらに凝集が進むと、製品に近い凝集体となります。CBは凝集体の形状によって機能性が大きく異なるため、産業界からは精密な形状制御方法を開発されることが期待されています。しかしながら、その生成機構は様々な説が提唱されているものの、未知の部分が多いのが現状です。
そこで青木研究室では、CBの生成機構を解明することを目的に熱分解実験とコンピュータ・シミュレーションを駆使し、高温時のCBの生成においてPAHの分子構造が反応に多大な影響を及ぼすことを世界で初めて明らかにしました。今回のオープンキャンパスでは、高校で学ぶ有機化学の発展系である、実験やシミュレーションによる最先端の化学と物理の融合研究を紹介します。
私たちのまわりには、金属や半導体、プラスチック、セラミックスなど、さまざまな材料があります。新しい材料やその作り方は実験室で生み出されますが、それを実際に使うためには“工業レベル”で製造する必要があります。工業レベルの装置やプロセスの大規模化・高速化が求められる環境では、実験室とは違う問題が出てきます。なぜなら、装置の中で流れや温度、濃度の分布が生じ、現象を複雑にするからです。良い品質の材料を効率的に作るためには、このような分布がなぜ生じるのか、品質にどう影響するのかを正確に理解し、制御することが重要になります。
私たちの研究室では、高温・高圧、不透明、微小な条件のために普通の方法では見えない装置内の現象を、光や中性子線、コンピュータシミュレーションを使って“可視化”しています。そして、実験とシミュレーションから得られた知見をもとに、装置の設計や材料製造プロセスの最適化を目指しています。