バイオ分子によるグリーンプロセスの開発

 二酸化炭素や有機酸、アミノ酸などバイオと関連した分子(バイオ分子)は人体に優しく環境にも負荷が少ない物質です。それを有効活用したグリーンプロセスを開発しています。その事例の一つがリチウムイオン二次電池正極材料の湿式精錬の革新です。従来、強酸、爆発性薬品、有機溶媒が用いられた湿式浸出を、水とバイオ分子のみからなる革新的グリーンプロセスで刷新しようと研究開発を進めています。

1.水熱法を用いた正極材料の回収

 リチウムイオン電池は大きな電力を産み出せること、寿命が長いこと、充電することで繰り返し使えることなどからスマートフォンや電気自動車に使用され、近年ますます需要が高まっています。しかしその原料の産出国は限られており、何かのきっかけでその国からの輸出がストップしてしまうと電池が作れなくなってしまいます。そのため、現在使用済みの廃棄リチウムイオン電池から原料を回収し再利用する試みが行われています。しかし現行法は環境へ悪影響を及ぼす薬品を使用しなければならないため、現在はクリーンなリサイクル方法が求められています。

 そこで新しいリサイクル方法として水熱法を用いることで環境にやさしい薬品だけでリサイクルできる方法を提案しています。現在は「JST未来創造事業」にも採択され、日本の未来を担う事業として研究を行っています。

2.超臨界二酸化炭素を用いたレアメタルの回収

 現在、リチウムイオン電池の正極材に用いられているレアメタルの回収プロセスは確立されていますが、プロセスが煩雑であることや毒性がある有機溶媒を使用しているという課題があります。

 そこで、当研究室では環境に優しい超臨界二酸化炭素を用いることで、煩雑だったプロセスの簡略化が期待される新しい方法を提案しています。