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東北大学 大学院工学研究科 バイオ工学専攻

研究内容research

ナノポーラス分子結晶による有機分子・金属イオンの選択的捕捉

有機分子や金属イオンの大きさや性質を精密に識別して効率的に捕集できる固体材料の開発は,分離精製プロセスの簡略化や環境負荷の低減に繋がる重要な課題です。我々は,カリックスアレーン等の環状ホスト分子が構築するチャネル状の空隙をもたないナノポーラス分子結晶の性質を利用して,高い選択性と広い適用性を兼ね備えた分離材料を開発しています。例えば,架橋基に硫黄原子を有するチアカリックス[4]アレーン(TCA)の分子結晶によるアルコール混合液中からのエタノールの高選択的捕集や,メチルアミン類やカルボン酸類の捕集におけるゲスト選択性のスイッチングに成功しています。また,水中から金属イオンを選択的かつ定量的に捕集する結晶材料の開発にも挑戦しています。



X,O-ハイブリッドカリックス[4]アレーン類の創製と機能開発

カリックス[4]アレーン(CA)はフェノールのオルト位をメチレンで連結した環状分子であり,代表的なホスト化合物の一つとして分子やイオン(ゲスト)の認識に利用されています。これまでに,より高度なゲスト認識能を獲得するために,フェノール骨格のエーテル化やエステル化により数多くの誘導体が合成されてきました。しかし,CAの立体的特徴を最大限に活かすためには,フェノール酸素そのものを変換することが望ましいと考えています。当研究室では,ヒドロキシ基の一部を直接他の官能基で置換したX,O-バイブリッド型誘導体の創製と機能開発に取り組んでいます。ハイブリッド化することにより,例えば,溶媒抽出実験において,分離の難しいランタノイドイオンの混合物から,イオン半径を精密に識別してYb3+を高選択的に抽出するなど,従来のフェノール誘導体では成し得ない高度な機能を達成しています。



二酸化炭素による不飽和化合物のカルボキシル化反応の開発

二酸化炭素は地球上に無尽蔵にある炭素資源です。そのような二酸化炭素を原料としてカルボン酸を合成する反応は,持続可能な社会の実現を目指す現代社会に適合した合成反応と言えます。当研究室では,Lewis酸を使って二酸化炭素を活性化して,単純な不飽和化合物をカルボキシル化する手法を開発しています。また,不飽和化合物から新電子的に有機金属種を調製して二酸化炭素でカルボキシル化(炭酸化)する手法も開発しています。これにより,トルエンなどの単純な芳香族炭化水素やインドールなどのヘテロ芳香族化合物を一段階で直接カルボン酸に変換することに成功しています。アルケン類のカルボキシル化にも挑戦しています。

不斉分子認識・認識場に関する研究

キラルな分子の分子認識や認識場について深い知見を得ることは,医薬品,香料などの生理活性物質や液晶材料などに用いられる光学活性物質の効率的な合成法や新しい利用法を開発するうえで重要な課題です。当研究室では,キラルな分子や共存するアキラルな分子の溶液中での会合や固液分配,ジアステレオメリックな物質間相互作用に与える溶媒効果の検討,ジアステレオマー結晶間に加熱により生じる融解相や溶媒蒸気との接触により生じる溶解相の反応場としての利用,軸不斉ビアリール化合物の光によるラセミ化やホモキラルな分子によるラセミ化の抑制など,キラルな分子がかかわる物質間の相互作用や物質認識場に関する研究を行っています。これにより,例えば,誘電率制御光学分割(DCR)法のメカニズムを解明し,また酵素を触媒とする速度論的光学分割の効率化を達成しています。


information

服部研究室
〒980-8579
仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-11
TEL.022-795-7263
FAX.022-795-7293

※研究室は,工学研究科総合研究棟(C10)の5階です。詳しくは,下記をご覧ください。