現代社会に生まれた私たちは社会、経済、そして環境の素早く絶え間ない変化のなかで生活しています。新しい技術の誕生は時に私たちのライフスタイルを一変させ、新たな変化を生んでいきます。
化学工学では、物質やエネルギーの流れを制御し、また変換を行うことで様々な目的を達成するシステムをつくります。ここで研究されている化学技術は、将来どんな変化を我々の生活にもたらすのでしょうか。
化学システム工学研究室では、他の研究グループと協力し、様々な要素技術を組み合わせてできる全体システムのもたらす将来像を描き、経済、環境、そして社会への影響を分析しています。これらの結果を利用すれば、私たちの仕事や生活環境の変化の様子を理解でき、事前に変化を迎える準備ができます。また、研究グループも望ましい変化をもたらすことの出来るような技術開発に取り組むことができるのです。その将来像を描く過程では、研究者に加え、社会の様々な担い手の方々との協働がおこなわれます。
オープンキャンパス当日は具体的な例のなかから上記の様な取り組みの様子を紹介します。
バイオマスとは、再生可能資源の一種で、木材など現生の生物により生産された資源です。バイオマスは、風力、太陽光、地熱など多くの他の再生可能資源と異なり、電気以外に液体燃料、化学原料、水素等にも変換できる点で優れています。そして、この変換のためには「触媒」が必要になります。高性能な触媒があれば、バイオマスを効率よく変換でき、石油や天然ガスなどの化石資源を代替することができます。私たちは、このバイオマス資源を高速・高効率で変換するための固体の触媒を開発しています。ここでは特に、植物油からバイオディーゼル燃料製造時に副生するグリセリンや、木材など木質バイオマスに多量に含まれるセルロースを有用な化学品へと変換する触媒について紹介します。ここで用いられる触媒は、イリジウムとレニウムから成るナノ合金微粒子です。この触媒はイリジウム単独やレニウム単独しか入っていない触媒にはない新しい機能を発現します。このように、上手に成分などを組み合わせて触媒を作ることで、興味深い触媒の働きを生み出すことができることに是非注目してください。