世界的な食料問題や環境保全の対策の一つの糸口として、降水量の少ない乾燥地、海水に浸かった土壌、毒性の強い重金属が蓄積した不良土壌においても生育が可能となる植物を作り出すために、植物の環境ストレスに対抗する生命分子の仕組みを理解して、分子のデザインを行い環境ストレスに強い植物の開発をすすめています。
乾燥ストレスの低減や病害抵抗性の向上をめざして、植物のイオン輸送体に作用する分子標的剤の開発を行っています。生物が本来もっている環境適応能力を最大限に引き出す研究です。
「バイオ材料」や「バイオ燃料」を生み出すバイオ技術は、植物や藻類だけがもっている空気中のCO2から、油(炭化水素)や糖類(炭水化物)を太陽光エネルギーによって作り出す特別な能力に基づいています。本研究室では、光合成の最適化にかかわる生体分子を探り,生物を用いて効率的に炭素化合物を生産する新たな手法の実現をめざして遺伝子工学・分子生物工学を駆使した研究と開発を行っています。
遺伝情報の検出,生体膜再構成法や細胞内分子の可視化する測定によって、これらの研究を行います。この機会に、最先端のバイオテクノロジーに触れて、生物の能力を引き出す生物工学の面白さと可能性を実感してください。
地球温暖化防止やSDGsの観点からサーキュラーエコノミーに注目が集まっています。化石資源の使用を低減して、再生可能なバイオマスや大気中の二酸化炭素を直接利用するバイオテクノロジーが2050年のゼロエミッションに向けて重要な鍵になります。田丸研究室では、微生物、植物、動物の生物機能を活用し、組換えタンパク質・抗体生産やグリーンケミカルに役立てる研究をしています。
(1)未利用バイオマスからのグリーンケミカル製造
嫌気性微生物Clostridium属細菌によるバイオマスの分解・糖化・発酵プロセスに注目し、分解・糖化した炭素源からバイオアルコールやバイオポリマー原料の生産を行うことができます。
(2)魚類バイオテクノロジーを活用したバイオ医薬品・細胞治療への応用
ゼブラフィッシュの受精卵に創薬標的タンパク質を発現させて、これを抗原としてスイホウガンの水泡液中に免疫すると特異的IgMが取得できます。この時、水泡液中のB細胞からIgHとIgLの両遺伝子を一本鎖抗体にすると抗体医薬品になり、これをがん患者T細胞表面に提示するとCar-T細胞療法に応用できます。
(3) 次世代放射光施設ナノテラスを用いたバイオイメージング
ナノテラスの軟X線を利用することで細胞壁構成成分の分光分析が可能になり、セルロースやヘミセルロース、リグニンなどの植物バイオポリマーの分布を可視化することができます。また、魚類の骨形成や微生物飼料が体内でどのように消化されるのかなど、これまでに例のないバイオイメージングが可能になります。