東北大学 工学部 化学・バイオ工学科

オープンキャンパス オープンキャンパス

見学コースB

マイクロデバイスによる細胞機能解析

<総合研究棟 6階 617号室>

 “生きている1個の細胞”が、我々の研究室のテーマです。生物は、いろいろな働きをする細胞が集まって構成されています。その細胞たちがどのような働きをしているかを解析するためには、1個の細胞の特徴や機能を緻密に計測する必要があります。そのためには、1個の細胞を自由自在に取り扱う技術や計測する装置が必要です。しかし、細胞はとても小さく(1cmの1000分の1くらいの大きさ)通常のピンセットは使用できません。そこで、我々はマイクロ・ナノテクノロジーを用いたマイクロ・ナノデバイスを開発しています。特に、先端がマイクロ・ナノメートルサイズのキャピラリーデバイスを用いることで、1個の細胞を回収したり、局所的に化学物質を投与したりできます。さらに、化学物質を検出できるようにセンサ電極を組み込むことで、1個の細胞が放出する物質や細胞膜に存在する膜タンパク質の機能を調べられます。これにより、抗がん剤の評価や、再生医療における有用細胞の分離・回収も期待できます。このように、細胞の特性を研究するための手法を開発して、工学や医学の発展に貢献することが我々の目標です。また本研究室では、日常のヘルスケアに応用可能なセンサデバイスの研究も行っています。超高齢化社会に突入し健康リスクの高い現代において、体液中の成分を手軽に測定することで日常的な健康管理を可能にするデバイスの開発により、安心安全でスマートな社会構築への貢献を目指します。

ヒトのガン細胞(左)とキャピラリー、マイクロ電極(右)の顕微鏡写真

バイオ分子の進化
-自然にない機能を生み出す-

<総合研究棟 6階 607室>

 「タンパク質」は食品成分の一つとして身近なものですが、本当の姿は遺伝子が持つ情報が「機能」として初めて表現される重要な分子で、様々な産業で活躍しています。特に医薬分野では、副作用が小さく治療効果が高い医薬品をつくることができるため、世界的に激しい競争がおきています。20種類のアミノ酸が重合したタンパク質は、アミノ酸の配列が変わることによって様々な機能を持ちます。2018年のノーベル化学賞には、自然界でおこる進化を試験管の中でまねて自分の好きな機能をもつタンパク質を創りだす「進化分子工学」の研究が選ばれました。私たちは、この進化分子工学に人工知能を組み合わせて天然にはない構造や機能を持つタンパク質を生み出し、医療、環境、ナノテク分野に役立てようと研究しています。

(1)AI&進化分子工学による新機能タンパク質の開発

進化分子工学にAIを組み合わせることで、自然界では起こらなかった合理的な進化を試験管の中で行うことができます。

(2)がん治療を目指した人工抗体

がん細胞に結合する部分とがんを攻撃する細胞(免疫細胞)に結合する部分を組み合わせて、免疫細胞が効率よくがん細胞を攻撃できる抗体を創りだせます。

(3) ナノテクへの応用を目指した結合タンパク質

生物進化を模倣した遺伝子操作を用いて、無機材料に結合するような自然界にはない機能を持つタンパク質を創ることが可能になり、基板上へのタンパク質・ナノ粒子・細胞の集積が可能になり、高感度な医療用センサーなどへ応用できます。

バイオ分子の進化 -自然にない機能を生み出す-

遺伝子組換え技術の可能性を探る

<総合研究棟 5階 508室>

 全ての生物は細胞によって構成されています。その細胞機能を正常に維持するためには、「酵素」というタンパク質触媒による複雑な代謝経路の制御が重要です。特に、自立的な移動が難しい植物や微生物は,環境変化に対応するための巧妙な生存戦略として細胞内で多様な酵素反応を発達させ、多種多様な構造の化合物を生合成しています。それらは、私達人間にとっては、未知の薬理活性や生理活性の可能性を秘めた新奇化合物の宝庫でもあります。私達の研究室では、生物からその様な新奇酵素を取り出し、その反応触媒メカニズムを分子レベルで解明したうえで、工学的に応用することを目指しています。
 酵素などのタンパク質の設計図は遺伝子に書き込まれているため、酵素機能の応用のためには遺伝子工学技術が不可欠です。例えば、植物中にごく少量含まれる有用化合物の生合成酵素の遺伝子を取り出し、増殖速度の早い微生物に組み込むことで、酵素や目的化合物を微生物中で大量に合成させることが可能となります。また、酵素の設計図たる遺伝子配列を操作することで、新たな機能を与えた酵素をデザインすることも出来ます。さらに、遺伝子組換えにより新たな代謝経路を付与することで、新たな花色を示す花の品種を創り出すことなども可能となります。
 研究室公開では、遺伝子工学を身近に感じてもらうため、遺伝子の化学的本体であるDNA についてわかりやすく説明します。また、遺伝子工学技術で作出された自然界に存在しない色の花や、光るタンパク質を導入した植物細胞などの実例についても説明します。

自然に学びそれを活かす
野生型トレニア(左)と、黄色色素を合成する酵素を導入した組換え型トレニア(中央)
蛍光タンパク質の遺伝子を導入した植物細胞(右)