大井研究室
環境保全センター・研究部門・東北大学大学院工学研究科・応用化学専攻
 

スズおよびケイ素化合物の活性化と新規付加反応

有機スズ試薬のアルデヒドへの付加反応

我々はロジウム錯体を触媒として用いることにより,アリールスズのアルデヒドへの付加が進行することを初めて見い出し,1997年に報告した.アリルスズの付加はよく知られているが,それ以外の付加反応はほとんど報告例が無かった.反応は極めて化学選択的であり,アルデヒド以外の官能基は反応しない.

 

S. Oi, M. Moro, and Y. Inoue, Chem. Commun., 1997, 1621-1622.

 

反応機構として,アリールスズ反応剤と一価のロジウム錯体とのトランスメタル化反応により,活性なアリールロジウム種が系内で発生し,これがアルデヒドに付加するものと提案した.

 

 

ところで,上で述べたアリールロジウム種のような後周期有機遷移金属錯体は,オレフィンやアセチレンのような炭素−炭素多重結合へ付加することは一般的に良く知られているが,カルボニル等の炭素−ヘテロ原子多重結合への付加は珍しい.上で述べた機構が正しいとすれば,アリールロジウム種のカルボニルへの付加の初めての例となる.

 

有機スズ試薬のα,β-不飽和カルボニル化合物への共役付加反応

先の反応をα,β-不飽和カルボニル化合物へ適用すると共役付加反応が進行する.基質としてはα,β-不飽和エステル,ケトン,アルデヒドを用いることができる.特に,アルデヒドの場合,1,2-付加体は生成しない.

 

S. Oi, M. Moro, S. Ono and Y. Inoue, Chem. Lett., 1998, 83-84.
S. Oi, M. Moro, H. Ito, Y. Honma, S. Miyano, and Y. Inoue, Tetrahedron, 58, 91-97 (2002).

 

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