遷移金属原子に様々な有機分子・原子団(配位子といいます)が配位結合して形成される有機遷移金属錯体は,その結合の特異性,立体構造の多様性などから,触媒,酵素モデル,あるいは機能分子として作用することが期待されます.
有機遷移金属錯体の反応例を模式的に下の図に示しました.金属原子をM,配位子をLで表しています.金属と配位子の組み合わせは無限と言って良いほどあり,これにより,様々な性質を持った有機遷移金属錯体をつくることが出来ます.ここへ有機分子Aが近づくと,Aは配位子として金属に配位します.同じように別の有機分子Bも金属に配位します.この時,配位により近づいたAとBの分子は,金属の力も借りて新しい結合をつくります.そして新しい有機分子A-Bができます.通常,ただ混ぜ合わせただけでは決して反応しない分子も,このような有機遷移金属錯体の作用によって反応させることができます.さらに,有機分子A-Bが金属から離れると,金属錯体は元の形(ML2)に戻りますから,再び新しい分子A,Bと反応することができます.このような働きをする分子は触媒と呼ばれ,有機遷移金属錯体の大きな特長となっています.
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