新規二核遷移金属錯体の設計と合成およびその応用

遷移金属錯体による触媒反応は、現在では精密有機合成において重要な位置を占めているが、そのほとんどは単核錯体を触媒として用いており反応は単独の金属中心で進行する。これに対し、二核錯体を触媒として用いた場合には、二つの金属の協働作用により単核錯体では実現不可能な特異な化学変換が期待できる。これまでにも遷移金属二核錯体は数多く合成されてきたが、触媒反応において特徴的な機能を示す例はごくわずかである。

　

　

本研究室では、単核錯体触媒では実現困難な新規触媒反応の開発を目指し、新規二核錯体の合成およびその触媒能の評価を行っている。二つの金属が協奏的に働く二核錯体構築のためには新たな配位子の設計が必要であり、これまでにアミジンやピリダジンを中心骨格とする配位子を合成している。これらを用いて合成された二核錯体は常に二つの金属が近傍に位置しておりその協働作用が期待される。

　

　

参考文献

1. Naofumi Tsukada, Tetsuo Sato, Hiroyuki Mori, Shuichi Sugawara, Chizuko Kabuto, Sotaro Miyano, Yoshio Inoue, Journal of Organimetallic Chemistry, 2001, 627, 121-126.
2. Naofumi Tsukada, Osamu Tamura, Yoshio Inoue, Organometallics, 2002, 21, 2521.
3. Naofumi Tsukada, Tomohiro Mitsuboshi, Hiroyuki Setoguchi, Yoshio Inoue, Journal of the American Chemical Society, 2003, 125, 12012.
4. Naofumi Tsukada, Kazuko Murata, Yoshio Inoue, Tetrahedron Letters, 2005, 46, 7515.
5. Naofumi Tsukada, Hiroyuki Setoguchi, Tomohiro Mitsuboshi, Chemistry Letters, 2006, 46, 1164.