大井研究室
環境保全センター・研究部門・東北大学大学院工学研究科・応用化学専攻
 

遷移金属ルイス酸を用いた不斉反応

これまでに,我々は二価のパラジウムおよび白金のカチオン性錯体がルイス酸性を示し,Diels-Alder反応などのルイス酸触媒として有効であることを見い出している.ルイス酸といえば一般に典型金属のホウ素やアルミニウム,前周期遷移金属のチタン等のハロゲン化物が有名であるが,後周期遷移金属がルイス酸性を示すことはあまり知られていなかった.というのは,これら後周期遷移金属のハロゲン化物は全くルイス酸性を示さないからである.ところが,金属上に電荷を有するカチオン性錯体とすることによりルイス酸性が発現することに我々は気が付いた.

まず,ルイス酸によって触媒される代表的な反応であるDiels-Alderにパラジウムのカチオン性錯体を用いたところ,高い触媒活性を示すことを見い出した.さらに,パラジウム錯体の配位子としてキラルなBINAPを用いたところ,極めて高い(99%ee)不斉が誘導できることも見い出した.

 

 

カルボニルを親ジエン体とするヘテロDiels-Alder反応に対してもパラジウムのカチオン性錯体は良好な触媒活性を示し,活性化されていない単純なジエンとアルデヒドから穏和な条件でジヒドロピラン類が得られた.

 

 

このヘテロDiels-Alder反応はBINAPを配位子とすることにより,極めて高い不斉収率が得られることも明らかにしている.

 

 

References

  1. S. Oi, K. Kashiwagi, E. Terada, K. Ohuchi, and Y. Inoue, Tetrahedron Lett., 37, 6351 (1996).
  2. S. Oi, K. Kashiwagi, and Y. Inoue, Tetrahedron Lett., 39, 6253 (1998).
  3. S. Oi, E. Terada, K. Ohuchi, T. Kato, Y. Tachibana, and Y. Inoue, J. Org. Chem., 64, 8660 (1999).

 

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