大井研究室
環境保全センター・研究部門・東北大学大学院工学研究科・応用化学専攻

 

アリル遷移金属中間体を経由する新規反応の開発

アリル化合物は遷移金属錯体と容易に反応しアリル遷移金属中間体を与える。このアリル中間体は遷移金属の種類や反応条件次第で求核試薬や求電子試薬など様々な化合物と反応し得る。その中でもアリルパラジウム中間体を経由する反応は、触媒量の金属で反応が進行し、またその反応が多岐に渡ることから有機合成にも広く用いられている。パラジウム以外のアリル遷移金属中間体も含めると、それらを利用した触媒的有機合成反応は膨大な数となる。しかし、意外にもアルケンやアルキンといった非常に単純な化合物との反応についてはほとんど知られていない。

 

 

本研究室では、触媒として用いる遷移金属あるいはアリル化合物を適当に選択することにより、アリル化合物とアルケンやアルキンとの新規反応を開発することに成功した。例えば、パラジウムを触媒として用いることによりトシル酸アリルとアルキン2分子から多置換ベンゼンが得られることを見い出した。この反応は単純な化合物から一段階でベンゼン環を構築できること、およびその位置選択性が高いことから有用な合成反応であるといえる。また、ロジウムやイリジウムを触媒に用いることによりアルケンのアリル化にも成功している。穏やかな加熱条件で進行する反応であり、1,4-ジエンを生成する。この反応系は芳香環のアリル化にも応用可能であった。

 

 

参考文献

  1. Naofumi Tsukada, Shuichi Sugawara, Yoshio Inoue, Organic Letters, 2000, 2, 655-657.
  2. Naofumi Tsukada, Tetsuo Sato, Yoshio Inoue, Tetrahedron Letters, 2000, 41, 4181-4184.
  3. Naofumi Tsukada, Tetsuo Sato, Yoshio Inoue, Chemical Communications, 2001, 237-238.
  4. Naofumi Tsukada, Shuichi Sugawara, Keiichiro Nakaoka, Yoshio Inoue, The Journal of Organic Chemistry, 2003, 68, 5961.
  5. Naofumi Tsukada, Yagura Yasushige, Tetsuo Sato, Yoshio Inoue, Synlett, 2003, 1431.
  6. Naofumi Tsukada, Tetsuo Sato, Yoshio Inoue, Chemical Communications, 2003, 2404.
  7. Naofumi Tsukada, Shuichi Sugawara, Tomohiro Okuzawa, Yoshio Inoue, Synthesis, 2006, 3003.

 

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