2011.2.1. 更新    

最近のトピックス

 

  海馬における長期増強(LTP)は記憶と学習において重要なメカニズムのひとつとされている。また、アルツハイマー病などの認知機能障害などにおいては、様々な要因によりシナプス可塑性障害が起こり、その結果LTPが抑制されることによって記憶障害が引き起こされることが報告されている。このシナプス可塑性に重要な分子標的のひとつがcAMP応答配列結合タンパク質(CREB)のリン酸化とそれに続くCRE依存的転写活性である。 大泉らは、このCRE依存的転写活性を増強する天然物質を探索した結果、神経細胞のモデル細胞として汎用されるPC12D細胞において、ローヤルゼリーが顕著なCRE依存的転写活性上昇作用を有することを発見した(Fig. 1)。

Fig. 1  ローヤルゼリー(RJ)によるCRE依存性転写活性促進
Fig.1 ローヤルゼリー(RJ)によるCRE依存性転写活性促進作用

 

 ローヤルゼリーの機能性食品への応用を目的として、ジャパンローヤルゼリー(株)と共同研究を行い、ローヤルゼリーのCRE依存的転写活性増強作用をさらに強める天然物の探索を行った。その結果、ローヤルゼリーに数種の天然物(シークァーサー、イチョウ葉、紅景天、フェルラ酸)を混合することにより、単独使用に比べて相乗作用が認められた(Fig. 2)。興味深い点は、ローヤルゼリー以外の成分は、低濃度域においてはCRE依存的転写活性作用を全く示さなかったが、これらの天然物を混合することによりはじめて、ローヤルゼリーの作用が顕著に増強されるということである。

 

 これらの結果から、PC12D細胞のCRE依存的転写活性においては、ローヤルゼリー単独で用いるよりも、混合して用いるほうがより効果的であることが明らかにされた。

 

Fig.2 ローヤルゼリーによるCRE依存性転写活性促進作用を増強する天然物の探索


Fig. 2ローヤルゼリーによるCRE依存性転写活性促進作用を増強する天然物の探索

 

  なお、本実験に用いた実験材料は、ジャパンローヤルゼリー(株)から提供を受けたものである。