超臨界流体とは

 物質は、温度および圧力の条件により、固体−液体−気体の3つの状態をとる。例えば、1気圧での水を考えると、氷点下では「氷」、0℃でとけて「氷→水」になり、100℃で蒸発して「水→水蒸気」になる。この時、液体と気体「水―水蒸気」が一緒に存在する温度(1気圧では100℃)は、圧力が大きくなるとともに高温になり、その上限が臨界点と呼ばれている。この臨界点を超えた状態が超臨界状態と呼ばれ、気体をいくら圧縮しても液体にはならず密度のみが高くなり、液体に匹敵した超臨界流体になる。この超臨界流体は、第4の状態と呼ばれることがある。
 超臨界流体は臨界温度を超えているため分子の熱運動が激しく、しかも密度を理想気体に近い希薄な状態から液体に対応する高密度な状態まで連続的に変化させることが可能であり、密度の関数として表せる多くの平衡・輸送物性の制御が可能である。流体の性質は基本的には流体構成分子の分子間相互作用に支配され、その大きさは分子間距離と熱運動に依存する。したがって、圧力を変えてもあまり密度が変化しない通常の液体に比べ、超臨界流体においては微小な圧力の変化が、流体としての性質に大きく影響を及ぼすことになる。超臨界流体の代表的な物性値を気体・液体と比較したものを表1に示す。

表1.  気体,液体,超臨界流体のマクロ物性の比較
物性
Gases
Supercritical Fluids
Liquids
密度 [kg/m3]
0.6〜2.0
300〜900
700〜1600
拡散係数 [10-9 m2/s]
1000〜4000
20〜700
0.2〜2.0
粘度 [10-5Pa・s]
1〜3
1〜9
200〜300
熱伝導率 [10-3W/mK]
1
1〜 100
100


超臨界流体の主な特徴を列挙すると、以下のようになる。

  1. 密度に依存する物性(溶解力、誘電率、イオン積など)が温度・圧力の微小変化で連続かつ大幅に変化する。
  2. 液体に比べ低粘性、高拡散性であり多孔質固体・微細構造への浸透性に優れている。
  3. 臨界点近傍では熱伝導率がきわめて大きくなるため、高い熱移動速度が得られる。また、動粘性が小さいため自然対流が起きやすい。
  4. 熱運動と分子間引力が拮抗している状態のため、溶質が存在する場合には、溶質分子周囲の溶媒和構造が形成され、それが温度・圧力により変化する。
温度・圧力により密度
        (=分子の集合割合)を制御可能
→ 物質の性質を制御
→ 一つの物質に多種多様な性質を持たせ得る

水の温度-圧力線図概略図
水分子の集合割合の温度・圧力による変化