1.LIBリサイクル

水熱酸浸出を起点とした廃棄リチウムイオン電池正極材料新規リサイクルプロセスの開発

 近年、脱炭素社会構築への期待から再生可能エネルギー利用への関心が高まっています。再生可能エネルギーは地域や天候によって供給が不安定であるため、エネルギー貯蔵媒体の併用が不可欠です。リチウムイオン電池(lithium-ion battery, LIB)はエネルギー貯蔵媒体の中で高いシェアを誇っており、今後需要量および廃棄量が増大していくと考えられます。LIBの正極材料はLi, Mn, Ni, Coなどの希少な金属により構成されています。日本は金属資源に乏しくそのほとんどを輸入に頼っているため、都市鉱山(urban mining)の観点より廃棄物からの資源の再生、有効利用が望まれています。LIBの現行リサイクルプロセスとして正極材料中の有価金属をイオンとして溶出させる酸浸出工程と水溶液中の複数の金属を別々に回収する金属分離工程から構成される湿式精錬法が主に用いられていますが、酸浸出工程において高濃度の無機酸および金属溶出を促進させるための過酸化水素(H2O2)の使用が必要であり、環境に与える負荷が大きいという課題があります。そこで当研究室では酸浸出の反応場として高温高圧水、浸出剤として低濃度であれば潜在的な環境汚染のない有機酸を使用し課題を解決しました。現在は流通酸浸出装置および流通金属分離装置を設計および製作し、LIB新規リサイクルプロセスの完全連続化を目指しています。

2.プラスチックリサイクル

多層プラスチックフィルムの液相ハイブリッドリサイクルプロセス開発

概要】海洋マイクロプラスチックや焼却によるCO2排出量の増加など、廃棄プラスチックによる環境負荷が高まっており、循環利用を可能とするリサイクル技術への期待が集まっています。特に包装材として用いられるプラスチックフィルムは、廃棄プラスチックの中で高い割合を占める一方で、多種成分が混合しているため単離が難しく主に焼却による処理がなされています。当研究室では、包装プラスチックにおいてシェア率の高いポリエチレン(PE)とポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルが積層されたプラスチックフィルムを想定し、PEのマテリアルリサイクル、ポリエステル成分のケミカルリサイクルを同時に行う”ハイブリッドリサイクル”の実現を目指しています。ポリエステル成分は、水熱、亜臨界水(液相)において加水分解することでモノマー成分が回収でき、同時に反応性が低いPEは未分解のまま回収することできるため、それぞれをプラスチック成分の原料とすることができます。本研究によって、溶融プラスチックを連続的に送り込む押出機を使用しており、環境負荷の高い溶媒を用いない高温高圧水によるよりクリーンなリサイクルを実現することができます。

参考文献

【論文】

[1] 相川達也,渡邉賢,相田卓,Smith Jr. Richard L.,硫酸,硝酸およびクエン酸を用いたコバルト酸リチウムの水熱酸浸出,化学工学論文集43 (2017) 313-318.

[2] 東大輝,相川達也,平賀佑也,渡邉賢,Smith Jr. Richard Lee,クエン酸を用いたコバルト酸リチウムの水熱酸浸出における速度論解析, 化学工学論文集45 (2019) 147-157.

[3] Q. Zheng, M. Watanabe, Y. Iwatate, D. Azuma, K. Shibazaki, Y. Hiraga, A. Kishita, Y. Nakayasu, Hydrothermal Leaching of Ternary and Binary Lithium-ion Battery Cathode Materials with Citric Acid and the Kinetic Study, The Journal of Supercritical Fluids 165 (2020) 104990.

[4] Q. Zheng, K. Shibazaki, T. Ogawa, A. Kishita, Y. Hiraga, Y. Nakayasu, M. Watanabe, Continuous Hydrothermal Leaching of LiCoO2Cathode Materials by Using Citric Acid, Reaction Chemistry & Engineering 5 (2020) 2148-2154.

[5] 柴﨑絢祐,東大輝,渡邉賢,木下睦,平賀佑也,宮崎秀喜,実リチウムイオン電池廃棄物に対する水熱法を用いた構成金属の有機酸浸出,化学工学論文集46 (2020) 167-175.

[6] Q. Zheng, K. Shibazaki, S. Hirama, Y. Iwatate, A. Kishita, Y. Hiraga, Y. Nakayasu, M. Watanabe, Glycine-Assisted Hydrothermal Leaching of LiCoO2/LiNiO2 Cathode Materials with High Efficiency and Negligible Acid Corrosion Employing Batch and Continuous Flow System, ACS Sustain. Chem. Eng. 9 (2021) 3246-3257.

[7] Q. Zheng, K. Shibazaki, T. Ogawa, A. Kishita, Y. Hiraga, M. Watanabe, Application of Hydrothermal Leaching Technology to Spent LIB Cathode Materials with Citric Acid Using Batch-type Device and Flow System, Journal of Chemical Engineering of Japan 54 (2021) 1-7.

【特許】

[1] マンガン及びニッケルの分離方法, 特願2019-151440

[2] レアメタルの浸出方法、レアメタルの分離方法及びレアメタル抽出用抽出剤, 特願2019-166322

[3] クエン酸マンガンの製造方法, 特願2021-075442.

1.LIBリサイクル
水熱酸浸出を起点とした廃棄リチウムイオン電池正極材料新規リサイクルプロセスの開発
 近年、脱炭素社会構築への期待から再生可能エネルギー利用への関心が高まっています。再生可能エネルギーは地域や天候によって供給が不安定であるため、エネルギー貯蔵媒体の併用が不可欠です。リチウムイオン電池(lithium-ion battery, LIB)はエネルギー貯蔵媒体の中で高いシェアを誇っており、今後需要量および廃棄量が増大していくと考えられます。LIBの正極材料はLi, Mn, Ni, Coなどの希少な金属により構成されています。日本は金属資源に乏しくそのほとんどを輸入に頼っているため、都市鉱山(urban mining)の観点より廃棄物からの資源の再生、有効利用が望まれています。LIBの現行リサイクルプロセスとして正極材料中の有価金属をイオンとして溶出させる酸浸出工程と水溶液中の複数の金属を別々に回収する金属分離工程から構成される湿式精錬法が主に用いられていますが、酸浸出工程において高濃度の無機酸および金属溶出を促進させるための過酸化水素(H2O2)の使用が必要であり、環境に与える負荷が大きいという課題があります。そこで当研究室では酸浸出の反応場として高温高圧水、浸出剤として低濃度であれば潜在的な環境汚染のない有機酸を使用し課題を解決しました。現在は流通酸浸出装置および流通金属分離装置を設計および製作し、LIB新規リサイクルプロセスの完全連続化を目指しています。
2.プラスチックリサイクル
多層プラスチックフィルムの液相ハイブリッドリサイクルプロセス開発
概要】海洋マイクロプラスチックや焼却によるCO2排出量の増加など、廃棄プラスチックによる環境負荷が高まっており、循環利用を可能とするリサイクル技術への期待が集まっています。特に包装材として用いられるプラスチックフィルムは、廃棄プラスチックの中で高い割合を占める一方で、多種成分が混合しているため単離が難しく主に焼却による処理がなされています。当研究室では、包装プラスチックにおいてシェア率の高いポリエチレン(PE)とポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルが積層されたプラスチックフィルムを想定し、PEのマテリアルリサイクル、ポリエステル成分のケミカルリサイクルを同時に行う”ハイブリッドリサイクル”の実現を目指しています。ポリエステル成分は、水熱、亜臨界水(液相)において加水分解することでモノマー成分が回収でき、同時に反応性が低いPEは未分解のまま回収することできるため、それぞれをプラスチック成分の原料とすることができます。本研究によって、溶融プラスチックを連続的に送り込む押出機を使用しており、環境負荷の高い溶媒を用いない高温高圧水によるよりクリーンなリサイクルを実現することができます。
参考文献
【論文】
[1] 相川達也,渡邉賢,相田卓,Smith Jr. Richard L.,硫酸,硝酸およびクエン酸を用いたコバルト酸リチウムの水熱酸浸出,化学工学論文集43 (2017) 313-318.
[2] 東大輝,相川達也,平賀佑也,渡邉賢,Smith Jr. Richard Lee,クエン酸を用いたコバルト酸リチウムの水熱酸浸出における速度論解析, 化学工学論文集45 (2019) 147-157.
[3] Q. Zheng, M. Watanabe, Y. Iwatate, D. Azuma, K. Shibazaki, Y. Hiraga, A. Kishita, Y. Nakayasu, Hydrothermal Leaching of Ternary and Binary Lithium-ion Battery Cathode Materials with Citric Acid and the Kinetic Study, The Journal of Supercritical Fluids 165 (2020) 104990.
[4] Q. Zheng, K. Shibazaki, T. Ogawa, A. Kishita, Y. Hiraga, Y. Nakayasu, M. Watanabe, Continuous Hydrothermal Leaching of LiCoO2Cathode Materials by Using Citric Acid, Reaction Chemistry & Engineering 5 (2020) 2148-2154.
[5] 柴﨑絢祐,東大輝,渡邉賢,木下睦,平賀佑也,宮崎秀喜,実リチウムイオン電池廃棄物に対する水熱法を用いた構成金属の有機酸浸出,化学工学論文集46 (2020) 167-175.
[6] Q. Zheng, K. Shibazaki, S. Hirama, Y. Iwatate, A. Kishita, Y. Hiraga, Y. Nakayasu, M. Watanabe, Glycine-Assisted Hydrothermal Leaching of LiCoO2/LiNiO2 Cathode Materials with High Efficiency and Negligible Acid Corrosion Employing Batch and Continuous Flow System, ACS Sustain. Chem. Eng. 9 (2021) 3246-3257.
[7] Q. Zheng, K. Shibazaki, T. Ogawa, A. Kishita, Y. Hiraga, M. Watanabe, Application of Hydrothermal Leaching Technology to Spent LIB Cathode Materials with Citric Acid Using Batch-type Device and Flow System, Journal of Chemical Engineering of Japan 54 (2021) 1-7.
 
【特許】
[1] マンガン及びニッケルの分離方法, 特願2019-151440
[2] レアメタルの浸出方法、レアメタルの分離方法及びレアメタル抽出用抽出剤, 特願2019-166322
[3] クエン酸マンガンの製造方法, 特願2021-075442.