猪股教授より


 超臨界流体の研究をはじめて25年くらいになります。当初は、「超」と「臨界」という接頭語が2つもついている ので、「すごい物質か!?」と考えておりました。石炭からの有用成分の抽出分離の基礎研究や天然物の抽出なども行いましたが、高い選択性と抽出能力を期待しておりましたが、結果が得られるようになると、徐々に「超臨界流体 といっても特別な物質ではない」と実感するようになりました。つまり、簡単ではなかったわけですが、だからこそ 「研究対象として面白い」と考え、今もその研究をしているわけです。
 特別ではない「超臨界流体」ですが、「気体や液体」とは違った特長を持っていることは確かです。実際に実験をし てみると、そこに特長的な挙動があるわけです。それをしっかり観察して、内在する現象を理解し、「超臨界流体で あればこそ・・・」といった技術の開発を目指しています。
研究室の学生には、「現象を5感を駆使して観察する」そして「常に、何故?を自問する」ように言っております。現在、当研究センターでは「水」「CO2」の超臨界流体の研究が中心ですが、これらが、熱力学的にも最も安定で、しかも身近に豊富に存在し、地球環境問題にも根本的に関与できる物質であると確信しているからです。これらを使った実用化技術を、できるところから是非とも社会に還元していきたいと考えております。