反応プロセス工学分野 / 東北大学大学院工学研究科化学工学専攻

研究内容

生体膜脂質酸化の反応速度論

 ヒトの内臓組織細胞を構成する生体膜脂質の酸化は、癌や動脈硬化などの生活習慣病の一因となることが知られています。図に示すように、生体膜は主にリン脂質とコレステロールからなる二重膜であり、周囲の水相(血液)中に存在する水溶性ラジカルがリン脂質やコレステロールなどの生体膜脂質の酸化を引き起こすと考えられています。一方、水溶性のビタミンCや脂溶性のビタミンEなどの抗酸化剤は経口摂取された後、血液を通じて運搬され、極性に応じて水溶性のものは血液中、脂溶性のものは生体膜内に保持され、それぞれ水溶性ラジカルによる生体膜脂質酸化を抑制すると言われています。生体膜の酸化は、生体膜脂質と水溶性ラジカル、水溶性・脂溶性抗酸化剤が複雑に絡み合って酸化および抗酸化反応を生じつつ進行します。従って、効果的な酸化防止のためには反応機構の詳細解明が重要となります。

 本研究では、生体膜類似構造を有するリポソームをモデル系として、リン脂質やコレステロールなどの生体膜脂質の酸化実験を行い、水溶性・脂溶性抗酸化剤による酸化・抗酸化メカニズムの解明に取り組んでいます。特に、各成分の相間物質移動や反応メカニズムを考慮した速度論モデルを構築することで、実際の生体内での脂質酸化挙動をシミュレートすることを目指しています。

   
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