H16分析化学授業計画
1.目的
分析化学は、様々な物質を同定し、定量する方法、すなわち化学分析法を提案する化学分野である。この授業では、分析化学が基盤とする、溶液内反応を定量的に扱う方法と、現在の化学分析法の中核をなす電磁波の吸収と放出を利用する分析法の基礎を学ぶ。
2.概要
化学反応を量的に表現することに習熟するため、まず化学量論と物質収支式および電荷収支式の取り扱いを、酸塩基、錯体形成、酸化還元、沈殿溶解などの化学反応(分析化学反応と呼ぶ)の平衡解析を例として学ぶ。さらに、いくつかの分光学的な測定技術に関する基礎知識を習得する。
3.達成目標等
・物質収支式および電荷収支式の取り扱いと質量作用則を理解し、平衡定数および化学種の平衡濃度の推算を行うことができる。
・いくつかの化学分析法が成立する要件と操作条件を,平衡論に基づいて考察できる。
・電磁波(光)と物質の相互作用と分光学の基礎的原理を説明できる。
4.他の授業科目との関連
本講義の基礎は、化学熱力学、量子化学、無機化学および有機化学にある。これらに関する基礎科目の学習が重要である。
分子化学工学 ・生物化学工学実験A(必修)に関連するので本科目を履修することが望ましい。
5.授業計画
1.化学分析法の基礎(1)化学量論と収支式 -分析濃度と平衡濃度-
2. (2)溶液内平衡の熱力学的基礎 -濃度と活量-
3.酸塩基反応(1) 酸塩基平衡の基礎:酸解離平衡定数と水の自己解離(イオン積)
4. (2) 酸塩基平衡解析の方法:酸塩基滴定法を例として
5. (3) pHの理論と測定法:ガラス電極pHメーターと酸塩基指示薬
6.酸化還元反応(1) 酸化還元反応の化学量論:酸化還元電位と平衡定数
7. (2) 酸化還元滴定法:滴定曲線の形と終点決定指示薬
8.錯形成反応(1) 錯形成反応の平衡論 錯形成反応の選択性-硬い酸塩基・軟らかい酸塩基の概念
9. (2) キレート滴定法の平衡論的基礎と設計法 -金属指示薬-
10.二相間平衡(1) 沈殿平衡:難溶性沈殿の溶解度:溶解度積の概念
11. (2) 沈殿平衡を含む溶液内平衡の取り扱い方
12. (3) 溶媒抽出の基礎化学 -水に溶ける物質・溶けない物質-
13.電磁波と原子および分子との相互作用:光子の吸収と放出,および分光の概念
14.原子、イオンおよび分子の発光/吸光現象と分析化学反応の組み合わせ -分析法の成立-
15.工業、環境、医療、および先端研究支援における分析法:分析化学と分析技術
6.成績評価の方法及び基準
定期試験成績を70%、授業参加状況と小レポート(クイズ解答)を30%として、総合的に判定を行う。